9月の入学になったらどうなるのか!?就職活動にはどんな影響がある?
緊急事態宣言の延長が発表された。
その発表を受け,首都圏を中心として臨時休校の延長が相次いで決定している。
その一方で,5月中旬から再開を決めている学校もある。
そうなると,学習の遅れや地域間の教育格差が更に広がってしまうと不安の声が増えることは必至だろう。
そこで,今日議論されている9月入学の案がキーになると考えられる。
ここでは9月の入学になったら就職にはどのような影響があるのかを考えたい。
ではまず,この9月入学とはどのようなものか簡単に説明したい。
一言で言えば,現在幼稚園を含めた学校教育の入学は4月でほぼ統一されているが
その入学時期を9月に変更しようというもの。
この制度の導入によるメリットとして,今回一番の理由にもなっている
「臨時休校により遅れた授業を取り戻すことができ地域間格差も埋められる」
ことや
「国際基準に合わせられる」
ことなどが挙げられるだろう。
一方デメリットとしては
「学年の年齢区分により混乱が起こる」
ことや
「法改正や会計年度の変更など様々な分野での課題がある」
ことなどがある。
その為,国民だけでなく政府の間でも未だ賛否議論が繰り広げられている段階ではあるがもし,この「9月入学」が実現されたら,世の中にどのような影響があるのだろうか?
導入時にそれぞれの立場で,ある程度の混乱が起こることは改革にはつきものだと思うが
長期的な視点で考えた時に最も大きく,そして複雑に影響を受けると考えるのが就職だ。
学校教育の先にあるのは主に就職であり,教育を終えた後にスムーズに就職できる環境が整備されていなければならない。
しかし,現在は4月入社の一括採用が主流で,学生も企業もその為にかなりの時間をかけて準備をしている。
もし,9月入学で8月までが学校の年度とされるのであれば,卒業の時期と入社の時期にギャップが生じてしまう。
これは,高校や大学側だけが何か対策を講じれば解決する問題ではなく,企業,そして社会全体が改革を行わなければ解消されない大きな問題だと言える。
「9月入学制度」はいつから開始されるのか?
このような就職の問題をはじめ,解決しなければならない問題はたくさんあるが
一体いつからこの9月入学制度が導入されようとしているのだろうか。
候補として
①今年2020年の9月
②来年2021年の9月(ただし今年度は5ヵ月延長)
の2通りが考えられる。
①については多くの人がほぼ不可能だと考えるだろう。
なぜなら,現段階でまだ具体的な方針が決まっていない段階で,ほんの3か月であらゆる分野の問題がクリアできるとは思えないからだ。
そもそも9月に事態が終息しているとも限らない。
また,長年前向きに議論されながらも実現に至らなかった背景からしてもこの短期間では不可能だろう。
従って,臨時休校による学習の遅れと格差を是正するには
②の来年の9月からが現実的だと考える。
ただし,今年度が来年の8月までに延長されるという前提の下だ。
この案は,現在政府の間でも有力視されているという。
来年の9月からであれば,膨大な量の法や制度の改正に要する時間も十分にとれると共に
今年度を8月までにすることで,万が一,臨時休校が再延長されたり
再開後にまた休校せざるを得なくなったりしても,ある程度の余裕を持って授業を行うことが出来る。
長年実現できなかった9月入学。導入できる可能性はあるのか!?
では,来年の9月からであれば実現可能なのだろうか。
私自身の意見では実現可能だと考える。
勿論,クリアしなければならない課題は山ほどあるが,この非常事態の今だからこそ逆に教育機関も,経済界もある程度の柔軟性を持って動けるのではないかと考えるからだ。
さて,冒頭で挙げた就職への影響以外にはどのような課題があるのだろうか。
- 多岐にわたる法改正が必要
- 臨時休校が解除されて,再開されている学校に通っている生徒や学生も,もう一度同じ範囲の学習をし,来年の8月まで授業を受ける必要があるのか
- 今年度が延びることで,結果的に皆,半年分留年したことになることへの国民の理解
- 在籍期間が延びる分の学費は誰が負担するのか?国の補助はあるのか?
- 5か月分,保育園の在籍が延びたり,0歳児の早期入園(4月から)を受け入れる必要が出たりと,より多くの保育士と施設が必要になる
このように,一般市民の私でもこれだけの課題が思い浮かんだ。
だが,これらの課題に対し,社会全体が協力的に取り組むことが出来れば,来年からの実現の可能性は高い。
逆に,今回達成できなければこの9月入学は今後も実現不可能だと考える。
勿論,導入に当たっては短期決戦を求めてはいけない。
あくまでも課題対する指針を示すことは早急に求められるが,その計画自体は5年,10年かけて解決していくような長期的な視点である必要があると思う。
9月入学による就職への影響は!?企業の採用活動は見直されるのか?
では,最も大きな影響を受けるとして冒頭でも触れた,就職についてもう少し考えてみたいと思う。
今回生じる問題点は,現在多くの企業が行う4月入社の新卒一括採用と学生が卒業する8月末とでギャップが生じる点だ。
現行の4月入学の場合,教育の年度が企業の会計年度と一致しているため,卒業後,スムーズに就職できている。
それが9月にずれ込むことにより,卒業から就職までの流れに影響が出てしまうのだ。
8年前に東京大学が独自で秋入学制度を導入しようとしたことがあったが,経済界が反対し,採用の時期等に対する柔軟な対応が得られなかった為に断念した経験がある。
それだけ教育の場というのは,企業の採用活動と上手く機能し合わなければならない。
それならば,学生に合わせて採用の時期を4月から9月に変更すればいいではないか?
とも思うが,この4月というのは企業の会計年度も関係している為単純ではないという。
しかし一方で,9月入学が主流の諸外国では,学校の年度と会計年度は一致していないところも多い。
私自身は企業の年度の仕組みについて詳しくないが,他国で通用しているのならば
日本でも年度の不一致は受け入れられるのではないかと思う。
また,一括採用自体も,これを機に通年採用という方法に変えても良いのではないかと思う。
8年前はその理解が得られなかったようだが,当時よりも明らかに国際化が進み,実際に既に独自で通年採用をしている企業も増えているのが現状だ。
そして,2018年には就活ルールの廃止が決定された。
それにより,会社説明会や面接,内定などの解禁時期の制限がなくなる。
これは2023年までかけて段階的に行っていく取り組みとされているが
2019年には新卒学生の通年採用を拡大するよう舵を取られている。
このように,経済界は既に,働き方改革で一括採用から通年採用へと動き出している為
今回の9月入学に合わせて対応することは十分可能だろう。
何よりも,今世の中は平時ではない。
荒れた経済状況である。
企業が柔軟に対応すべき時なのだ。
以上の事から考え,9月入学による学生の就職への影響はそこまで心配すべき課題ではないのかもしれない。
しかし,忘れてはならないのは,来年の4月入社に向けて,今まさに就職活動真っただ中な学生が多くいて,企業もその予定で採用活動を進めている点だ。
既に内定が決まった学生もいるかもしれない。
それが急に9月まで入社できないとなったらどうなるのだろうか?
学生側としては,今までの就職活動が水の泡になってしまうのだろうか?
入社できるのは卒業から半年後の翌年4月からなのか?
それまでの間は無職になるのか?
など様々な不安に駆られるだろう。
こういった不安までも払拭できるような,細かい対応が企業側に求められることは周知の事実だろう。
まとめ
ここまで述べてきたように,様々な課題がありながらも前向きに検討されつつある9月入学制度。
もし,本当に来年2020年の9月からスタートするのであれば,教育現場だけでなく各企業
そして社会全体でそれを受け入れる環境整備に向けて,とにかく柔軟な考え方と対応が求められる。
議論が進むにつれ段々忘れ去られがちな,今回の根本的なきっかけである
「学習の遅れと地域間格差の是正」
という目的。
そして,最も影響を受ける子供と学生の事を第一に考えて進めて欲しいと願う。
導入時に一番混乱を招くであろう来年就職予定の学生に対しては,不利益を被る学生が出ないように,明確な指針を示すことが最も重要になるだろう。
4月から9月までの間はインターンとして受け入れ,9月卒業後に正式に入社させるという方法もある。
または,単位が全て取得できている学生には4月卒業という特例措置を与えることも一つの方法だと思う。
いずれにしても,学校側と企業側での連携は必要不可欠となる。
他にも,浪人中の受験生や国家試験を目指している人へ対する配慮も必要だ。
考え出すときりがないが,明確な計画が示され,来年までに国民と社会の理解を得た上でスムーズに導入されるよう期待したい。